連載第32回/インストルメントパネル その2
エンジンの状態を把握する代表的なインストルメントとして、タコメーターとスピードメーターがあることは前回解説したとおりです。しかし、タコメーターはエンジン出力に関する情報を示す計器であり、エンジンの異常を予知したり発見したりするには、得られるデータが限られます。
エンジン関係のメーターには、ほかにも重要なデータを確認するための計器があります。今回は、エンジンアワーメーター、水温計、オイルプレッシャーゲージについて解説します。
エンジンアワーメーター
エンジンの使用時間を記録する計器
エンジンアワーメーターは、エンジンの使用時間を示す計器です。エンジンのトータル稼働時間をデジタル表示するタイプが一般的です。
エンジンを始動させることでスイッチが入り、使用時間が記録されます。自動車でいうオドメーター、つまり距離計の代わりとして使われる計器と考えると分かりやすいでしょう。
自動車では、走行距離をもとに消耗品の交換時期を決める部品が多くあります。一方、ボートでは走行距離よりもエンジンの稼働時間を基準にして、メンテナンス時期や消耗品交換の目安を判断することがあります。
中古艇の使用時間を見るときの注意点
中古艇で「使用時間100時間」などと表示されている場合、このエンジンアワーメーターのデータが使われていることがあります。ただし、この数値だけでエンジンの状態を判断するのは注意が必要です。
エンジンアワーメーターは、自動車の走行距離計と違い、比較的簡単に設置や交換ができる場合があります。そのため、表示されている時間が必ずしも進水時からの総使用時間とは限りません。
参考として、エンジンアワー1時間を自動車の走行距離20km前後と同等と仮定した場合、500時間程度であれば、これからエンジン本来の力を発揮する段階と見ることもできます。
ただし、エンジンの大きさ、使用環境、保管方法、メンテナンス履歴によって状態は大きく変わります。中古自動車の走行距離と中古ボートのエンジンアワーを単純に比較しないことが大切です。
テンプラチャーゲージ/水温計
エンジン冷却水の温度を確認する計器
テンプラチャーゲージは、メーター上に「TEMP」と表示されていることが多い計器です。エンジンを冷却する水の温度を計測する水温計で、冷却系統の異常を確認するために重要な役割を持ちます。
米国製ボートでは、華氏表示の計器が多く使われています。水の沸点である摂氏100度は、華氏では212度に相当します。
一般的には、華氏180度前後であれば正常な状態の目安と考えられます。華氏200度を超えている場合は、冷却系統に問題がある可能性があります。
そのまま高温状態で使用し続けると、エンジンが焼き付いてしまうおそれがあります。水温が異常に高い場合は、すぐに使用を控え、点検を行う必要があります。
水温が高いときに確認したい点検ポイント
水温計の数値が高い場合、簡単に点検できるポイントは主に4つあります。
ひとつ目は、インペラの摩耗などによるウォーターポンプの異常です。冷却水を送る力が弱くなると、エンジンの温度が上がりやすくなります。
ふたつ目は、冷却水取り入れ口の目詰まりです。海藻、ゴミ、砂などが吸入口に詰まると、十分な冷却水が取り込めなくなります。
三つ目は、温度を感知するサーモスタットの故障です。サーモスタットが正しく開閉しないと、冷却水の流れが悪くなり、水温が異常に上がる場合があります。
四つ目は、水温計そのものの故障です。センサーやメーターに不具合があると、実際の水温とは違う数値を表示することがあります。
これらを確認しても原因が分からない場合は、エンジニアに点検を依頼する必要があります。
オイルプレッシャーゲージ/油圧計
エンジンオイルの圧力を確認する計器
オイルプレッシャーゲージは、メーター上に「OIL」と表示されていることが多い計器です。エンジンが稼働しているときのエンジンオイルの圧力状態を示します。
米国製メーターでは、圧力の単位としてPSIが使われることが多くあります。PSIは圧力を表す単位で、エンジンオイルが適切に循環しているかを確認する目安になります。
通常、エンジン回転数を上げるとオイル圧力も上がります。高回転にしても針の動きが少ない場合や、通常より低い数値を示す場合は、エンジンオイルの量や状態を点検する必要があります。
目安として40PSI前後であれば、一般的には大きな問題がない状態と考えられます。ただし、適正な油圧はエンジンの種類や仕様によって異なるため、最終的にはエンジンメーカーの取扱説明書で確認することが重要です。
複数の計器を組み合わせてエンジン状態を判断する
タコメーターだけでは、エンジンの異常を細かく把握することはできません。エンジンアワーメーターで使用時間を確認し、水温計で冷却状態を確認し、オイルプレッシャーゲージで潤滑状態を確認することで、エンジンの状態をより正確に把握できます。
プレジャーボートでは、海上でトラブルが発生した場合、すぐに路肩へ停める自動車のようにはいきません。だからこそ、インストルメントパネルの各計器を正しく理解し、通常時の数値を把握しておくことが安全運航につながります。
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